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循環ズ

2024.04.04

ブラリサイクルと愛されるものづくりの秘訣に迫る。環境に配慮した社会への取り組みと残された課題たち

今回は京都市に本社を置く日本の衣料品メーカー、株式会社ワコール様にブラジャー回収の裏話やものづくりに対する想いなどについて、お話をお伺いしました。

目次

1. 自己紹介
2. ワコールについて
3. 愛されるものづくりの秘訣
4. ワコールブラリサイクルのお話
5. サステナブルな社会への取り組みと課題
6. 最後に
7. お話を伺った方

 

1. 自己紹介

みなさんこんにちは。循環フェス実行員・学生運営企画の新 美月(しん みづき)です!
私は京都外国語大学グローバルスタディーズ学科に通う22歳大学四年生。デザイナーをしていた母の影響もあり常にファッションと身近な幼少期を送る。大学入学後はサーキュラーファッションに対し強い関心を抱き、独学でサーキュラーエコノミーとファッションについて学びはじめました。大学4年次にはアパレル産業の実情とファッションロスを自身の目で確かめながら多角的に理解したいと思い、一年間大学を休学し現在まで服に携わる工場を巡る日々。地方を周りながら縫製工場さんと地域おこしプロジェクトを進め、一か月ほど縫製工場にてアルバイトとして縫製 を学んでいました。

ありがたいご縁の中で初めて福井県を訪れたことをきっかけに福井県勝山市に惚れ込み、今は関西と勝山の二拠点で生活中。ものづくりの楽しさ・奥深さを体感した私は去年から独学で服作りを学び始め、現在は自身の服作りと着物のアップサイクルプロジェクトを進めています。循環フェスでは学生運営企画として、ステージイベントを企画し、循環にまつわる出店者様のお探しな どのお手伝いをさせていただいています。

 

2.ワコールについて

ワコールは1946年に設立された、京都市を拠点とする日本の衣料品メーカーです。創業以来、美しさと健康を追求する女性のために、快適さとスタイルを兼ね備えたランジェリーとインナーウェアを中心に展開しています。サステナビリティが社会の要となる近年には、残反の提供や無駄の少ないものづくりにも注力し、環境配慮型素材の使用比率向上、製品破棄の低減、リサイクル活動などの取り組みを日々進めています。

 

3. 愛されるものづくりの秘訣

ワコールでは一つの製品を長く愛し使用してもらうため、企画から製造、そして私たち消費者の手に届くまでにはかりしえないほどのこだわりと情熱が込められています。
ものづくりをする際に大切にされていること、それは全ての製品をお客様の目線で考えること。毎日着用し直接肌にふれるものだからこそ、妥協は一切許されません。

 

新商品がカタチになるまで

シーズンごとに発表される新商品が開発されるまで、想像を遥かに超える時間と労力が費やされていました。快適さを徹底的に追求しながら細部まで緻密な設計の元、開発が行われます。デザイン・素材・機能性の検討が行われ、パタンナー・技術設計士・工場の三者が連携し試作品を制作。驚くこと に、一つの新商品が製品として形になるまでに平均25点もの試作品が作られるそう。試行錯誤しながら挑戦と改善を繰り返し、都度ミリ単位で調節が行われます。

 

大半の工程は職人の手作業

高品質で精巧な工程を要する制作、その大半は熟練された職人たちの手仕事で生地の裁断から縫製、包装、検査まで行われています。特にブラジャーの製造は、とても繊細で複雑。なんと一つのブラジャーは20~40個ものパーツから構成されているそうです。

細やかなパーツで構成されるブラジャーは、一点ずつ、正確で精通された職人技によって縫い合わされているのです。そして20~50工程の細部まで計算された複雑なプロセスを経てカタチになります。私たちが普段何気なく着用していた下着たちもまた、それは一種の作品なのです。数え切られないほどのプロフェッショナルたちの手を経ていることを忘れてはいけません。

 

「Made by Wacoal」を合言葉に

そんな緻密な製造プロセスを踏むワコールの製品は世界各地で作られています。国内では九州ワコールと呼ばれる長崎、熊本、福岡の3県、福井県、そして新潟県、国外ではベトナム、タイ、インドネシア、大連、 広東、ミャンマーなどで縫製。国境をこえて生産を続ける中で大切にしていること。それはやはり安心で長く愛される品質を守ること。「Made by Wacoal」を合言葉にどこで製造されても同じ品質の製品を提供できることを心がけておられます。さらに、独自の判断基準により品質管理が行われ、一つの製品に対し約150個の品質チェック項目が設けられています。

こうした製品への深い愛情と熟練の技術の結集が、ワコールの「Made by Wacoal」の精神を支えています。

 

4. ワコールブラリサイクルのお話

ワコールでは、2008年から独自のブラジャー回収を行なっています。当初、お客様からの「ブラジャーを普通ゴミとして捨てづらい」というお声がけから始まったブラジャー回収。2008年には約30,000枚、2009年約35,900枚、そして2023年には約240,000万枚のブラジャーが集められています。毎年、特定の期間中に店舗にて回収を行われています。

 

ブラジャー回収後の行方

現在回収されたブラジャーは株式会社JEPLANが行うリサイクルプロジェクト『BRING』によってリサイクルされています。回収されたブラジャーは一度ワコール流通センターへ送られたのち『BRING』を通じて厳しく管理されたプロセスを経てリサイクルされます。

『BRING』に到着後は、まずブラジャーを素材ごとに分別し、次に各素材を細かく砕いています。その後、磁石で金属の部分を取り除き、最終的にはこれらの素材が再生プラスチックに変わります。

環境にも消費者にも、やさしく配慮しながら行われているブラジャーリサイクル。なんとワコールの製品だけではなく、他社の下着も回収対象。スポーツブラ・ジュニアブラ・マタニティブラ・リマンマブラも回収を行なっているそうです。

 

回収場所と条件

回収の期間中、窓口となるのは国内の百貨店、下着専門店、同社直営店およびグループ会社を中心とした約800店舗。

サイズアウトしたもの、ワイヤーの変形、カップがしわで凹んでいるなどのブラジャーは、一度自宅で洗濯したのち、紙袋やビニール袋に入れ、お店のスタッフの方にお渡しすれば回収していただけます。

デリケートで繊細なものだからこそ捨て方に困ったことがある方もいるはず。新たな手放し方と して、ブラジャー回収に持っていくことも一つの循環です。

 

5. サステナブルな社会への取り組みと課題

廃棄量削減に向けた取り組み

ワコールではブラジャーリサイクルの他にもサステナビリティ推進の一環として2年前から寄付などの残反活用も行なっています。寄付先としては、京都精華大学の授業、繊維製品のゼロ・エミッションを目指す学生団体EWC(エンウィクル)、また宝塚歌劇団の衣装素材などに寄付されています。また現在、残反を使った新たな製品を開発中だそうです。
生産時にも工夫を。裁断の際に布地の無駄を最小限にするため、裁断時はパターンをパズルのように入れ合わせ、設計時から余剰部分の少ないデザインを考えるそう。

愛されるデザインの美しさを追求しながらも、ものづくりを熟知した職人たちの知恵によって廃棄の少ない製品開発が進められています。

 

現状と残された課題

しかしながらものづくりの過程では、必ずと言っていいほど端材やパーツの残りが出てしまいます。ワコールの場合、生地やレースの裁断時、レースの刺繍ぬけ、柄の取り方によっては数センチ程度の幅で余ってしまうそうです。ブラジャーという立体構造は曲線が多く、長方形の生地から無駄なくパーツを切り取ることは至難の業。

私たち消費者が快適に日常を過ごしながら、長く愛することができる製品作りに一切の妥協を許さないワコールさんは、作る側としての責任を持ちながら、ものづくりの持続可能性を模索しつづけています。

 

6. 最後に

今回はワコールさんにて、愛され続けるものづくりの秘訣とサステナブルな社会への取り組みについてお話をお伺いしました。環境に配慮しながらも常にお客様の声に耳を傾け、様々なニーズに応える努力を惜しまない。私たちに快適さと理想を提供している背景には、枚挙にいとまがないほどのものづくりの職人の技と手が介在していました。そんな背景を知るとまた、今着用しているお洋服たちへの愛着が湧き、1日でも長く大切に愛してみようと思うことができます。

 

7. お話を伺った方

株式会社ワコール
技術・生産本部 技術部 技術設計課 三木 萌氏
技術・生産本部 生産部 生産管理課 乾 詩菜氏
技術・生産本部 材料調達部 開発購買課 詫間 しおり氏